世界競争力ランキング(1) 【教育・科学技術イノベーションの現況【2023年版】】

2024.05.21

3-2-2  世界競争力ランキング(1)

 IMD(International Institute for Management Development)はスイス・ローザンヌに拠点を置くビジネススクールであり、1989年から「世界競争力年鑑」を毎年発表している。ここで示されるのが「世界競争力ランキング」であり、国家の競争力をあらわすランキングとして使われている。作成にあたり使用されている情報は国の競争力に関連する公表統計と企業の経営層を対象とするアンケート調査結果であり、これらに基づいて競争力指標が作成されている。アンケート調査を行っているのは統計ではとらえきれない事項を補うためであり、2023年版では63カ国・地域が対象となっている。

 指標は以下の4つの大分類に分けられている。

①経済パフォーマンス国内経済、国際貿易、国際投資、雇用、物価
②政府のパフォーマンス財政、税制、制度枠組み、ビジネス法制、社会的枠組
③ビジネスの効率性生産性・効率性、労働市場、金融、経営プラクティス、態度と価値
④インフラ基礎インフラ、技術インフラ、科学インフラ、健康・環境、教育

 この調査が開始された1989年から1992年までは日本は第1位であり、その後1996年までは5位以内の上位を保っていた。しかしその後は20位台の中盤の状態が続き、2023年調査では35位まで低下している。上位にはヨーロッパの人口の小規模な国が並んでいる。アジアの国・地域でもシンガポール4位、台湾6位、香港7位、中国21位、韓国28位、タイ30位、インドネシア34位となっており、これらの国々よりも日本は低位にある。

 2023年の4つの分類ごとに日本の順位を見ると、経済状況とインフラが20位前後と比較的高く、政府のパフォーマンスは約40位、ビジネスの効率性は約50位となっている。数年前までは4分類中で政府のパフォーマンスが最下位であったが、現在はビジネスの効率性の低さが日本の順位を下げている。

 インフラのうち、技術インフラについては、通信への投資レベル、インターネット利用者の多さやブロードバンドの早さなどのインターネット環境、産学連携、ハイテク貿易、ICTサービス輸出など17項目が調査されている。科学インフラについては、国全体及び企業の研究投資の水準、国全体及び企業の研究者数(FTEカウント)、科学論文の状況、特許の状況、研究や知財保護に関する法制、企業と大学間の知識の移転など22の小項目が取り上げられている。

(桑原 輝隆)

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